桜色のレプリカ１巻☆最後まで読みました（４）

先日は、リツイートや相互フォローいただきありがとうございました。
遅ればせながら、最後まで読みましたので、感想を掲載させていただきます。
失礼な所もあるかもしれませんが、ご容赦を！

試し読み感想については下記。

　さて本作、２巻まで買って、報告とレビューをと思っていたのですが、用事のついでに行った「ゲー◯ーズ新◯店」には、置いていないとのこと。
(店員さんの話では、そもそも仕入れをしていないという話でした)
なんと、HJ文庫のお膝元である新◯に置いてないとは……。
(別にチクったりとやかく言ったりするつもりはないので、)素直に秋葉原で買うことにします。あそこならあるでしょう。みんな買った報告してるし……あるよね……？……売り切れたりしてないよね！？　電話で確認してから向かおうと思います。

そんなわけで、試し読み１巻読了後の感想を書かせていただきたいと思います。
一言で言えば、非常に完成度の高い良作でした。

以下ネタバレのオンパレードとなりますので、ご注意ください。

■本作を読んで考えた諸々のこと(相当長い)
　試し読み記事では、いろいろな可能性について書いたつもりですが、うーんかなり外してますね。お恥ずかしい。ジャンルとしては、"SF+terror"になるかと思います。もちろんミステリーやラブコメ、ゾンビモノといった要素も持っていますが……。そして、テーマとしては「人間とは」でしょうか。

　ロボットといえば「われはロボット」や「ターミネーター」など人類VSロボットばかり描かれてきましたが、日本では「鉄腕アトム」「ドラえもん」など親近感の湧く共生者としてのロボットが多く描かれてきました。本作は、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とか「ソードアート・オンライン」とか、まあ、このジャンルはあまりに作品数が多すぎて、比較対象が難しいですね。

　「行動ゾンビ」なんて言葉が作中にも出てきますが、自分が"人間らしさ"を設定された機械だったら、昨日までの記憶が実は作られたものだったら、誰しも１度は空想したことがあるものではないでしょうか。しかし、自分が確かに人間だと証明することは極めて困難です。

　昔、デカルトは「コギト・エルゴ・スム(我思う、ゆえに我あり)」と言って、自己を証明しましたし、パスカルは人間だけが「考える」ことができる生き物として「人間は考える葦である」という言葉を残しています。

　しかし、現代では、ほぼ全ての動物は「考える」ことが可能で、「感情」があることも証明されてきています。一部の霊長類には「道具を使う」ことも「言葉を理解して返答する」こともできると実験が証明しています。

　他方、近年急速に発展しているAI技術においても、すでに心を持ったAIは存在します。(もちろんトップダウン型で設定したデータから作られたものですが)。ディープラーンニングによって、どんどん学習を続けるAIは、もう10年先には、人間を超越した感情と知能をもつ存在になると言っている研究者もいます。もっとも、人間すら超越したAIを、人間に似せる必要なんて、ないのかもしれませんが。人間の方が善で、良だなんて、誰も定義できなくなりますからね。

　作中でも描かれている「心」は、脳内の神経伝達による化学反応により発生する感情の総称としてもいいですが、メカニズム自体は未だ謎という状態でしょう。結局、人間も機械も突き詰めれば物質。機械に心を持たせられないはずはないのですよね。
とか、いろいろ考えさせられるお話でした。

　本作では、「人間と非人間」の差異、「人間とは何か」がテーマとして描かれていると思います。人間らしいレプリノイドの中に紛れた、１人の人間を探す中で、人間とレプリノイドの違いが曖昧になっていく主人公。

　しまいには、レプリノイドに設定された人間らしさに嫌悪感を覚え始めます。それは、とりもなおさず、自分が人間であることを確かめる手段がないことに気づきたくないという感情からくるものですが、考えれば考えるほど、自分はレプリノイドと同じく代替可能なのじゃないかという、怯えと苦悩に悩まされていきます。

■ようやく感想
　誰が人間なのか、まだはっきりとわかったわけではないですが、今のところ予想通りでした。しかし、最後の最後でね。あんな風になるとは、いえ、全く考えなかったわけではないですよ……本当に……まあ、正直に言うと、やられました。斜め上をいっていました。さすがです。

　あとは、作中で描かれる小道具や授業内容などが、ストーリーやテーマとしっかり絡んでいて、完成度が高い作品だなと思わずにはいられなかったです。そもそも小説を読んで、これだけ考えさせられるという１点をもってしても、読む価値のある本だし、素晴らしい作品といっていいでしょう。映画化とか、して欲しいですね。

■改善点（長め）※色々失礼
ややまとまりに欠けますが、１つ１つ書いていきたいと思います。

　まず、前回の紹介で書いたハーレム要素。せっかくヒロインが書き分けられているので、もう少し甘い話になるのかと思ったら予想の斜め上を言っていました。ライトノベルという出版媒体を使う以上、魅力的なヒロインを多数用意しなければならないのでしょうが、ちょっと作品のモチーフに合わないような気がしました。カップリングはすでにできているので、４人はいらないかもと思う感じです。２巻以降の掘り下げ要素になっていたら申し訳ありません。

　ハーレム+ミステリー+妹？という作品は、MF文庫Jの十八番ですが、冒頭だけを読めば、それを期待してしまう人も多かったと思います。そういう日常系ラブコメの要素が急に変わるのが、緊迫シーン。そしてこの世界の実情が明かされるのですが……。戦闘シーン前とシーン後の主人公の心情にちょっとギャップがありすぎて、唐突すぎるように思いました。

　というわけで、戦闘シーン前後について。主人公は、手のひらを裏返したように生徒たちをレプリカとみなし、嫌悪感を持ち始めていきますが、個人的にはもう少し段階を踏んでも良かったのかなと思いました。今まで仲良くしていたレプリノイドに対して、ひどい仕打ちをしているようにも見え、守ってくれる機械に対して、感謝こそすれ嫌悪するのはおかしいだろう。と一部の読者の反感を買うのではないかと。

　逆に嫌悪を抱いてからの主人公の苦悩については、紙幅が多く取られており、非常にわかりやすかったです。ただ、若干のくどさを感じさせました。自分のことに手一杯で、機械を思いやったり、他者を思いやったりする余裕のない主人公に、人間らしさを感じつつも、心の温かさを感じられない部分が、若干引っかかりました。もっとも、ラストを見れば、意図的に違和感を持たされていたのかと、感じないでもないです。読者の主人公への印象はやや悪くなる作品なのかなと思いました。

　あと、やや思ったのは、これだけ技術的に進んだ未来ならば、ボトムアップ型のAI、もしくは、ディープラーンニングにより、自分の意志や心をもったAIが開発されていてもおかしくないかなというところでした。まあ、そうなってくると、人間の方が優れているという根底まで崩れてしまうので、このお話には不適切になりますが……。もっとも、そういう技術はあっても、レプリノイドには搭載していない可能性もありますね。

　最後に、これは完全に意図違いかもしれませんが、レプリノイドの中にいる人間を探すというミステリー要素の部分が、ちょっと物足りませんでした。主人公が「人間と非人間の差異」「人間とは何か」を考えていくための要素として、入れ込んだのかなと思いますが、探すために使った方法に論理的な要素や、段階的な要素がもう少しあっても良かったと思います。紙幅の問題もあったのかもしれませんね。

■というわけで総評
　長々と批評を書かせていただきました。不快に思われた方がおられましたら、申し訳ありません。ただ、これだけ色々考えさせられて、これだけの量の感想を書ける作品はなかなかありません。それだけ、私の心を揺さぶった作品であり、数十年先も私の記憶に刻みつけられる良作なのだと思います。

　掛け合いの妙で魅せる作品、圧倒的な知識と情報で魅せる作品、ぶっ飛んだ設定と滑稽なキャラで魅せる作品、どれも甲乙つけがたい良さがあると思いますが、本作のように物語で魅せる作品は、ラノベ業界でも一定以上の筆力のある作家さんにしか、作り得ない小説だと思います。

　正直ラノベじゃなくてもいいのではないかなと。だって600円そこそこですから、２巻がハードカバーで2000円とか言われても、買ってしまうと思います。最後に、もう売れ行きは好調でしょうが、さらなる大ヒットをこころよりお祈りいたしております。ぜひ、映画化とかして欲しいですね。
・考えさせられる小説を読みたい方
・大どんでん返しが好きな方
・SFロボットモノが好きな方
・terrorが好きな方　等々
オススメです！