個人的に好き☆山本五十子の決断☆新作ライトノベル紹介☆試し読み(112)
毎回新シリーズライトノベルの試し読みから新作を紹介する本コーナー
今回は「山本五十子の決断 」をインフォします。
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■簡単な感想
個人的に好きな作品です。扱ってる時代、歴史IFというジャンルを考えれば、読者を選ぶと思いますが、好きな方は好きだと思いますよ。
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詳しくは公式で⇒WEB発小説特集 | 富士見書房
戦火を生き抜く海軍乙女たちの、敗北の運命を覆せ!
目の前に現れたのは戦艦大和。頭上に飛ぶのは九六式艦上戦闘機。高校生・源葉洋平は修学旅行中、第二次大戦時代に酷似した世界に飛ばされた。そこで、彼が出会ったのは……
「おめでとう、君はこの大和に乗艦した初めての男の人だよ」
伝説の名将・山本五十六ではなく、五十子と名乗る女の子!?
小柄で不思議系な天才大佐や、血の気は多いけど可愛い一面もある少将などなど美少女だらけの艦で過ごし、問題を解決するうちに一目置かれていく洋平。そんな彼を五十子は特務参謀に指名して……!? 洋平は敗北の運命を覆し、彼女たちを救えるのか!? 現代高校生と美少女提督の軍事系ラブコメ戦記、開戦!
⇒このライトノベルのスタッツはこんな感じ
そして私の評価はこちら
読みづらいので簡素にしていく方向です。
※試し読みとはいえネタバレを嫌う人もいると思いますから・・・・・・工夫します。
■著者
如月 真弘さんは、第1回カクヨム小説コンテスト<特別賞>受賞し、本作で、満を持してデビューする作家さんですね。他にもなろう系でいくつか書いているようです。
■イラストレーター
珈琲猫さんは、言わずもがなの有名イラストレーターさん。ラノベでは「バーガント反英雄譚1」が有名でしょう。さっぱりとした可愛さや綺麗さの中に、フェティッシュとコケティッシュを入れ込んでくる絵師さんという印象です。
「珈琲猫」のプロフィール [pixiv]
■ジャンル
「織田信奈の野望」の影響は言わずもがな色濃く受けているように思われる。主人公がタイムスリップするタイプの歴史小説で、リアル日本と少し世界が違っている物語。今回は先の大戦中のお話なので、色々難しかろうと思われる。なお、主人公が歴史SLG、戦艦好きで、この時代の事実を知っていること、登場人物が女人化していること等が類似点といえるだろう。
それと、ハーレム要素+主人公だけ特異体質で、ヒロインたちとともに戦えるというパタンは、「IS〈インフィニット・ストラトス〉」から始まる流れに沿っていて、「最弱無敗の神装機竜≪バハムート≫」とかとも同じ。
■ストーリー
こちらも、偉大な先達に影響を受けざるをえないと思われる。「織田信奈の野望」では、本能寺の変。本作では、敗戦が暗い影を落としているが、戦時中の日本の体制が続いたらそれはそれで、という批判を持つ人も多いと思われるので、物語の展開方針も、中々難しい舵取りとなるだろう。
短い巻数で終わるのならば、何か危難が訪れたり、歴史上の齟齬があったりして困ったなかで、問題を解決(敵を倒す?)していく内容を数回繰り広げるお話になるだろう。もちろん、史実をなぞっていくとは思われが、安い物語にはしてほしくないものだ。
■気になった点
まずは時代について。1つは、戦国時代よりかなり知名度が低いということ。正直「艦隊これ」がなかったら成り立たないかなと。2つ目は、日本ではこの辺の歴史がタブー視しているので、個人的には嬉しいが、高年齢層の信奈ファンには刺さりづらいのではないかというところ。高年齢層帯はやっぱり太平洋戦争否定論者が多い気がする。
実際、種々批判はあるものの、織田信長を好きな人は多い。開明的な思考で日本の近代化を推し進めた政治家、文化人として捉えられている。一方で五十六は、統括指揮官ではあるものの、政治家ではないし、史実でも高い見識をもっていたのに思うように動けなかった。キャラとして少々窮屈な中間管理職的になってしまうのは悲しいように思う。
ただ、正直なところで言えば、こういう小説が出てくるのは純粋に嬉しい。実際問題、日本海海戦の東郷平八郎は知っていても、本作の主人公、山本五十六を知らない人は多いと思う。海軍で言えば、優れた見識を持っていた山口多聞や、雪風艦長の寺内正道、永遠の0のモデルになった富安俊助等、太平洋戦争中の英雄はいる。かくいう私も、受験で世界史選択だったため、この時代は学校で習わなかった。
歴史系ラノベを書くということについて。第1にわかりやすい文章で、全てを表現するラノベにおいて、読者の想像力を求める歴史モノ、かつ歴史戦争モノは中々に難しい。「坂の上の雲」のように資料集にしてはいけないのだ。(いや、ストーリーも面白いけど)この時代を描いた漫画や、一般小説は多いものの、単なる斬り合いや、魔法の打ち合いより、砲雷撃戦や魚雷攻撃を想像するほうが難しい。
その上で、「織田信奈の野望」と比較すると、主人公が、初期にちまちまと苦労する話や、着実に一歩一歩出世し、家臣団の信頼を勝ち取っていく部分に弱さが見える。生身の人間同士の斬り合いや鉄砲を使った戦争のやり方、工夫の仕方はわりと想像がつくが(長篠とか、金ケ崎とか)、艦隊決戦において、未来知識をどうやって戦術につなげていくかは、想像しづらくなる。
最後に、あとは、時代的な部分で遠慮せず、安易になってほしくないなと思う。
■総評
好みの分かれる作品だと思いました。特に、戦争中の日本について中立的に捉えてる人って、パイ的な意味で相当少ないと思います。歴史好きは高年齢層に多いですが、中率的なのは若年層ですからね。なかなか難しいでしょう。ただ、私はこの作品、好きなので紹介するわけですが。
そして、「織田信奈の野望」との関係をどう見るかですね。宇垣束と柴田勝家とか似ていますし(まあ宇垣纏もにてるのかな政治家じゃないので、違うように見えますが)、設定にも類似点が多いので、鼻につく方は、やめておいたほうが良いと思います。
あと、珈琲猫さんの描くイラスト、個人的に好きですというところと、この時代、この設定で、どこまで切り込んでいけるかを楽しみにしたいと思います。
・艦これが好きな人
・戦時中の歴史が好きな人
・参謀、軍師主人公が好きな人
・歴史IF小説が好きな人
上記の人にはオススメだと思います。
最後にもう一度、そんな本作みなさまよろしくお願いします!
山本五十子の決断
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メーカー希望小売価格:600円+税